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発刊に寄せて

執筆者の写真: Fine Ladies Kendo WorldwideFine Ladies Kendo Worldwide

更新日:1月12日

剣道範士 角 正武

剣道範士 角 正武


この度女性の剣道愛好家に的をしぼった情報誌が創刊されることになり誠に喜ばしく思います。また、多くの女性剣士が長年期待を寄せておられたことと推察いたします。


日本では1952年に全日本剣道連盟が創立して以来、学校剣道が復活して男女共学が一般化した影響もあり、女子生徒の剣道への取り組みが活発となり各地で女子の大会が開催されるようになったのは1960年代に入ってからのことだと思われます。また、戦後復興の一環として“青少年健全育成”を趣旨とする幼少年剣道クラブが全国各地に急激に増加したことが、女子生徒の剣道活動を後押ししたことは紛れもない事実と申せます。


1962年には第1回全日本女子剣道選手権大会が、わずか8名の参加ではありましたが、史上初の女子剣道全国大会として開催されています。


高等学校では1963年から女子個人選手権大会・1969年からは女子団体優勝大会が開かれるに至っており、大学学生連盟では1967年から女子個人選手権大会・1982年から女子団体優勝大会がスタートして全国的に女子の剣道活動が一層活況を呈するようになりました。


一方社会人の女性剣士も年々増加傾向が続き、既婚女性剣士が集う全国家庭婦人剣道大会(団体)は1984年に第1回大会が開催され、1997年には全日本実業団剣道大会に女子団体の部が発足しています。


また、1970年に第1回大会が開催(日本武道館)された世界剣道選手権大会では2000年(第11回大会)から女子個人選手権大会が・2003年(第12回大会)から女子団体優勝大会が公式種目となり、世界各国でも女性の剣道愛好者の増加が顕著となっています。


以上は各種大会の発足にみられる女性剣道の発展の概観ですが、それのみに眼を向けてはなりません。


もとより剣道が武器(刀剣)による闘争殺戮の武術から、精神性を含む技術の修錬を通して人格の陶冶を図る修養の文化として発展継承されてきた歴史はよく知られています。その背景には日本独特の文化や風習あるいは宗教や政治の影響が強く作用して今日に至っていることは明らかであり、世界各地の武術の変遷とは大いに異なる独特のものが内在しているのです。剣道修錬の道程で技術を競い合うことは修業の一端であって、修行の本分ではないことを自覚しておくことは、剣道愛好者として最も大切な態度であることを忘れてはなりません。


平素の稽古においては、若い男性のような体力に依拠した技術を追求するのでなく、己の心の作用と相互の気力の交わりを重んじた、しなやかでかつ美しい剣道が女性剣士によって体現されることを大いに期待するものであります。


社会の構成員としての女性の役割は今後ますます重要となる今日、多くの女性剣士たちが剣道の精神文化性を理解して自律の精神力を高め、相互尊重の態度を培って社会で大いに活躍されることを願って止みません。本誌が世界各地の女性剣士の相互理解と、女性剣道の啓蒙に資することを切に願うものであります。


『勝ち負けは一瞬(ひととき)の戯れ、昇段は仮初めの証、平素の稽古こそ生涯の糧』 を贈り結びとします。


2021年1月1日

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