top of page

女子剣道雑誌創刊に寄せて

執筆者の写真: Fine Ladies Kendo WorldwideFine Ladies Kendo Worldwide
般社団法人盈進義塾興武館館長 小澤博

般社団法人盈進義塾興武館館長 小澤博


この度の女子剣道雑誌創刊、誠におめでとうございます。世界中がコロナ禍の中、時代の変化の予感がしています。その様な折の創刊で大変期待しております。


また剣道界を眺めると、各種の試合や行事が中止あるいは延期になっております。この機会をチャンスと捉えて女性の皆さんに剣道を考えて頂きたいと思います。


昭和20年(1945)、第二次世界大戦が終結し76年が過ぎました。それまで女性が剣道することはほとんどありませんでしたが、昭和27年(1952)10月、全日本剣道連盟が発足し、少しずつですが女性の姿を見るようになりました。剣道に男女の区別はありませんが、女性の剣道雑誌なので、ここではあえて「女子剣道」という言葉を使わせて頂きます。剣道の目的は段位取得ではありませんが、発展の推移を見るのに分かりやすいので男女の有段者数から考えてみました。


戦前から高野佐三郎先生の修道学院で修行した高野初江先生が、女性で初めて七段に合格したのは昭和41年(1966)11月です。45年後、平成23年(2011)10月15日発行の『剣道かわら版』に女性の六段・七段の登録人数が掲載されています。それによると以下の通りです。             


Table with kendo practitioners by rank

平成22年(2010)から平成23年(2011)の六段・七段の人数が急激に増加していますが、この1年間何があったのでしょうか。このことを分析すると面白いと思います。そしてそれから9年後が以下の表ですが、全日本剣道連盟が調査した有段者の登録者数です。平成23年(2011)から令和2年(2020)の9年間も興味があります。


Table with number of kendo practitioners by rank

令和2年(2020)1月、このような記録が月刊「武道」に掲載されました。(全日本剣道連盟普及委員会委員の姫野純二氏の調査による)日本の剣道人口1,942,563名の内、女性が577,015名です。


剣道は総合科学

今後、この雑誌で女子剣道を考えて頂きたい視点として幾つか挙げておきます。


  1. これだけ(上記)の人がそれぞれ目的を持って剣道をしています。目的は十人十色、百人百様です。人にはそれぞれ人格があります。剣道は人間が行う武道ですから「何のために」という哲学がなくてはなりません。

  2. 長い間培われた技術は物理学です。刀には鎬がありますが竹刀にはありません。しかし現代剣道は竹刀で行われていますが、応じ技は鎬に関連した技術です。足捌きも同様で「送り足」・「開き足」によって繰り出す技は異なります。

  3. 歴史学という視点も大事です。剣道には長い歴史があります。日本の歴史と共に発展してきたと言っても過言ではありません。その中での女子剣道をどのように捉えるか、興味深いテーマです。

  4. 相手との攻防、やり取りは心理学です。相手の心の読み合いですから心理学を学ぶと有効です。

  5. 江戸時代は全国に260以上の藩があり、各藩は藩校を築き武士の子弟を教育しました。剣術は必修科目として行われましたが、実施場所は土の上であったり、道場であったり様々でした。それが現在に受け継がれて剣道場があります。道場は木の床が張ってあります。薄いと踏み抜きます。厚過ぎると踏み込んだ時、踵・膝・腰等身体の各部位に負担がかかります。これには建築工学が必要になります。特に、欧米を例にとると、剣道をする場所は他のスポーツを行う体育館が多く私の経験から床が堅くて怪我をすることが多いのではないかと思われます。それに対応するためには医学的な知識が必要です。

  6. また、日本の剣道家の中には80歳90歳になっても矍鑠として若者相手に稽古する姿をよく見ます。まさに生涯剣道そのものです。どうしたらその年齢まで稽古することができるのでしょうか。80歳90歳まで剣道に携われるのは理想です。これも医学や生理学の知識を借りることになります。そればかりではありません。江戸時代に盛んに行われた流派の技を応用して、物理学とのコラボレーションで可能になるでしょう。

  7. 初心者を指導するのは根気がいります。小さな子供達を教え導くためにはコーチ学や教育学も必要になります。

    これからの女子剣道を考えると課題が盛り沢山です。


私の71年間の人生は剣道理論で生きてきました。18歳の時に購入した宮本武蔵著『五輪書』に「兵法の利にまかせて、諸芸諸能の道となせば、万事において我に師匠なし」と書かれていました。特に、柳生新陰流の極意「三磨之位」は剣道だけではなく、生きるために参考になりました。


原稿執筆に関しては70歳を超えたので、道場のホームページは別にして公の雑誌に原稿を書くことを止めました。今後は若い人の執筆を手助けするのが年寄りの役目と思っています。最後になりましたが、本雑誌と女子剣道の発展を祈念しております。

閲覧数:3回0件のコメント

最新記事

すべて表示

Comentários


Os comentários foram desativados.
bottom of page